COLUMN
コラム
分解まで最長数千年 なぜプラスチックごみは「環境の敵」になったのか
レジ袋の有料化に、プラスチックストローの廃止、さらには炭素税の導入検討まで……。プラスチックはこの数年で「悪者」扱いを受けている。だが、なぜプラスチックなのだろうか。いまさら質問しづらい、プラスチックにまつわる環境問題を紐解いてみよう。
プラスチックの生産量は数十年で爆増した
プラスチックが持つ素材としての長所は、誰もが知るところだろう。成形が簡単で、軽い。着色も簡単で、密封性、耐熱性にも優れている。世界のプラスチック生産量は1950年に200万トンだったが、2015年には3億8,000万トンまで爆増した。
これまでに人類が作り出したプラスチックの総量は83億トンといわれる。特に増加したのが包装容器としての用途だ。発泡スチロール、緩衝材のプチプチ、ビニール袋、食品のトレイ、ペットボトルなど、あらゆる梱包材にプラスチックは活躍している。問題は、これまでに作られた膨大なプラスチックのうち、わずか9%しかリサイクルされなかったことだ。
プラスチックごみ問題が議論されるまで、ほとんどのプラスチックは埋め立て処分になるか、海洋へ捨てられてきた。その結果、2050年には海洋に投棄されたプラスチックの量が魚の量を超えるという、異常な予測が立っている。
プラスチックごみ問題の主因は、高すぎる耐久性
ではなぜ、ここまでプラスチックごみの量が増えてしまったのか。皮肉にも、プラスチックが選ばれてきた理由でもある「耐久性の高さ」がその主因である。
Earth Respect (アース・リスペクト)誌によると、段ボールが1~3年で分解されるのに対し、ペットボトルは450年、魚の網は600年と、途方もない長さを必要とする。分解速度を上回るペースでプラスチックが製造されてしまったため、地球はいま、プラスチックであふれかえる事態になっているのだ。
プラスチックは海の生物に餌と誤認されやすい。しかし、プラスチックは食べても消化されないため、胃にとどまる。その結果、海の生物は空腹感を感じなくなってしまい「食べているのに餓死」を起こしてしまう。直近でも、クジラがビニール袋を食べすぎて餓死したと報告があった。プラスチックはただの邪魔者ではなく、動物を殺すのだ。
マイクロプラスチックとして有害物資を食べるリスク
また、プラスチックが分解される過程では「マイクロプラスチック」と呼ばれる5mm以下のプラスチックに砕けることが分かっている。そのマイクロプラスチックを貝や魚が食し、さらにそれを大きな魚が食べることで、我々人間もプラスチックを口にしている。
プラスチックそのものを食べる害は明確になっていないが、プラスチック製品には往々にして、強度アップや着色を目的とした添加物が塗布されている。食品以外に使われているプラスチック製品の場合、添加物も口に入ることを想定されていない。だが、有害な物質もマイクロプラスチックとして、食品にまざりうる。
海に沈む添加物には、現在禁止されている有害物質もある。これを「レガシー汚染」と呼ぶが、有害な添加物が食物連鎖を経て食卓に並ぶリスクはいまだ不透明だ。すでに東京の魚の8割からはプラスチックが検出されている。マイクロプラスチック問題は「これから」ではなく「今」のリスクなのである。
今からでもプラスチックを減らす努力を
プラスチックごみ問題へは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)をはじめとする多くの主体が動き出している。だが、最終的にプラスチックの使用を控えるのは個々の消費者だ。
私たちはこれから、プラスチック製品への課税や、非プラスチック製品への補助で変化を体感していくだろう。そこで世界に何が起きているか目を向け、積極的にプラスチックの量を減らしていくことが、確実な変化をもたらすだろう。
Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について
「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。