COLUMN

2019年11月27日 コラム

プラスチック汚染って何?5分でわかるプラスチックごみ問題の基礎知識

プラスチックごみが毎年、ジャンボジェット5万機分も海に捨てられていると知っているだろうか。普段、私たちはプラスチックごみが収集車に乗せられていく先を想像しない。しかし、プラスチックごみは道端に捨てられたり、収集されても適切にリサイクルされないものがある。

処理されなかったプラスチックごみは土壌や海へとどまる。中でも海のプラスチックごみ汚染は深刻で、年に少なくとも800万トンものごみが海へ流れ込む。これまで海に蓄積したプラスチックごみは1.5億トンともいわれ、2050年には海に住む魚と同じ量まで増える見込みだ。

プラスチックごみ汚染は海だけにとどまらない。2019年の研究では、土壌に5mm以下のマイクロプラスチックがあると、植物の育ちが悪くなると報告があった。また、プラスチックごみは処理場に運ばれた後も焼却されることが多く、二酸化炭素が増えることで地球温暖化にもつながっている

水、土、空気……地球そのものが、プラスチックごみによって危機に瀕しているのだ。

プラスチックごみの何が問題なのか?

なぜ、プラスチックごみだけが問題視されるのか。その理由は、土に還るまでの期間だ。

ごみが土に還るまで何年かかる? ペットボトルは約450年かかるといわれている。

 

この図は、さまざまなごみが土に還るまでの期間を指している。電車の切符は約2週間で土に還るが、ペットボトルを含むプラスチックごみは450年かかる計算だ。土壌の状態や添加物の有無によっても異なるが、ビニール袋、ペットボトル、漁業の網などに使用されるプラスチックは、長年残り続ける。

単に残るだけならよいが、約34%のプラスチックごみは海水よりも重く、沈んで海に蓄積する。プラスチックが海底に覆いかぶさり、無酸素状態にして生物を窒息させてしまう。プラスチックごみは酸素だけでなく光も遮るため、光合成を阻害して海藻やサンゴも深刻なダメージを負う。プランクトンの量や海藻が減ってしまうため、それらをエサにする海の生物が減っていく。

生物は食物連鎖によって支えられているから、海藻やプランクトンが減れば小魚も減り、それをエサにする大きな魚が減る。そうして私たちの食卓に届く魚の量にも影響を及ぼすのだ。サイエンス誌によれば、2048年までに食用の魚がいなくなる恐れがあるという。プラスチックごみ問題は、密接に私たちの生活を脅かしているのだ。

 

プラスチックごみはリサイクルされていない?

だが、私たちは日々プラスチックごみを分別している。あの分別したプラスチックは、リサイクルされているはずではないのか?

プラスチックごみはリサイクルされている?過半数は燃やして「エネルギーとして再利用」されている。

日本では、プラスチックごみのリサイクルが容器包装リサイクル法で義務付けられている。いっぽう、日本でリサイクルされているプラスチックごみの過半数は、燃やすことでエネルギーとして再利用されている。プラスチックごみを別のプラスチック製品として生産する、いわゆる「リサイクル」での利用は22%に過ぎないのだ。燃料エネルギーとして再利用すると、燃やす過程で二酸化炭素が増えてしまう。そのため、海外では燃料エネルギーへの転換利用をリサイクルとして認めない動きもある。

この流れを受けて日本ではさらに規制を強化し、洗顔料や歯磨き粉に使われるプラ微粒子の製造・販売の自粛を求める「海岸漂着物処理推進法改正案」が2018年夏から施行された。また、レジ袋有料化に向けても法整備が進んでいる。

また、一部のごみ処理業者は不法投棄をしているのではないかとの疑いもある。せっかく収集されても、それが海や山へ捨てられると汚染の原因になってしまう。

 

どこまでプラスチックごみを減らすべきか

日本政府はどうやってプラスチックを減らす?

これらの課題を踏まえ、日本政府が2019年に開催されたG20から推進しているのが、「プラスチック資源循環戦略」だ。プラスチック資源循環戦略では、以下が目標数値として定められた。

 

2030年までに

・使い捨てプラスチックを25%排出抑制

・容器包装の6割をリユース・リサイクル

・土に還るバイオマスプラスチックの利用を倍増(200万トン)

 

2035年までに

・使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクル

 

政府主導のプラスチックごみ削減目標にならう形で、大企業でも次々にプラスチックごみ削減策が増えている。プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)では、台所用洗剤ブランド・ジョイから国内の海岸で回収したペットボトルを再利用した「JOY Ocean Plastic」の発売を決めた。セブン&アイ・ホールディングスは、2019年10月より全国のヨークマート・イトーヨーカドーでプラスチックの材質を環境負荷の低いポリエチレンに移行すると発表した。

だが、これら大手企業の取り組みは10~25%のプラスチックごみを削減するにとどまる。今後は消費者が「使い捨てプラスチックを使った製品を避け、長く使える素材の容器を選ぶ」ことが求められる。急ピッチで法整備が進む中、残されたのは消費者のマインドシフトだ。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)の最新情報を見る

お問い合わせ・ご意見はこちら