COLUMN
コラム
3Rのその先へ
“アップサイクル” “サーキュラーエコノミー”
環境・ごみ問題への取り組み方の一つとして「3R(Reuse,Reduce,Recycle)」は一般に知られてきているが、ここへ新たな視点として加えたいのが、“アップサイクル”や“サーキュラーエコノミー”と呼ばれる地球環境へ負荷の 少ない資源の循環、またその経済活動の仕組みだ。
アップサイクルとは、捨てられるはずの廃棄物にデザインやアイデアなどの付加価値をプラスし、違う製品として生まれ変わらせることを指す。リサイクルとの最大の違いは、リサイクルは一度原料に分解し元の製品に戻したり原料自体を再利用するのに対し、アップサイクルは素材をなるべくそのままでアップグレードし、使用継続性の高い別の製品として寿命を引き延ばすことにある。
例えば、廃材の特性を活かして家具を作る、捨てられるはずのタイヤチューブを使用して耐久性の高い鞄にする、海洋プラスチックごみにデザインを加えアクセサリーに仕上げるなど、思わず欲しい!と思うような個性的な製品がファッションの業界を中心に次々と生まれている。
「素材そのままを活かす」という考え方に基づいている為、再生に必要なエネルギーをリサイクルより抑えることができる為、よりサステナブルな再利用と言える。また、繰り返し同じ用途で使うリユースとも違い、別の製品に作り変えるので、新しい命を吹き込まれたその素材はより長きに使用されることが期待できる。
【参考】https://ideasforgood.jp/glossary/upcycle/
廃棄物”は新たな“資源”
サーキュラーエコノミー
※サーキュラーエコノミーのモデル概念図「バタフライ・ダイアグラム」エレン・マッカーサー財団より【https://www.ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy/concept/infographic】
サーキュラーエコノミーとは、製品を廃棄せずに新たな資源と捉え循環させる社会と持続可能な経済成長に結びつける考え方のことで、革新的な生産消費の経済モデルとして欧州を中心に急速に広がっている。原材料の調達・設計デザインの段階で既に、使用後の回収→資源の再利用ができることを前提とし、廃棄物ゼロを目指して製品が作られる。
サーキュラーエコノミーは前出のアップサイクル同様に環境負荷を可能な限り抑え、新たな地球資源(バージンマテリアル)を出来る限り使用せず、廃棄物も資源と捉え、不必要なエネルギーを生み出さないサステナブルかつ最小サイクルとして注目されている。
【参考】https://ideasforgood.jp/glossary/circular-economy/
EUでは2015年に「サーキュラーエコノミーパッケージ」が採択され、大量生産大量消費型の経済モデルに見切りをつけ、持続可能な経済成長を軸に据える世界を主導している。
日本においては2018年「第四次循環型社会形成推進基本法」を制定。その中で重要な方向性の1つとして示された「地域循環共生圏」には、資源循環×地域活性化が組み込まれている。
高齢化・過疎化が進む地方が持つ豊かな環境資源に再度目を向け、その資源がもたらす持続可能なエネルギーや食糧で都市部との繋がりを強固にし、資源の循環型社会を通して雇用の創出・環境・経済の諸問題を同時に解決していく狙いだ。
消費者としての選択肢
消費者が低価格や便利さを求めすぎる結果、新たなバージンマテリアルを使って大量生産の低コスト製品があふれる現代。使用後は容易にごみとして廃棄され、生産時と廃棄時に二重のエネルギーで地球に負荷がかかっているのは言うまでもない。
修理やアップサイクルを通じて人件費やコストを高めてまで資源を長く使うよりも新たな製品を買い求める方が遥かに楽な時代になってしまい、大量生産大量消費を経験した我々がこのサイクルから脱却することは困難との指摘もある。
経済成長を実現しながらも限りある地球の資源をより小さなループで循環させるシステムを成功へ導くには“安い” “便利”だけで安易に買わない消費者の意識が不可欠となる。日本人もかつてはそうしていたように“修理しながら長く使う” “製品のストーリーに目を向けて購入する”など、持ち物に愛着を持つ ‘脱・使い捨て’ライフスタイルを選択する方がきっと素敵な自己表現力を持ち、自然とも社会とも継続的な共存を可能にし、人生をもっと豊かなものにしてくれるのではないだろうか。
Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について
「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。