COLUMN
コラム
“水”は買わずにアプリで探す時代へ
レスペットボトルアプリでつなぐ街と人のサステナブル
PETボトルリサイクル推進協議会の調査によると、2016年日本国内で出荷された清涼飲料ペットボトルは227億本。これは年間1人あたり183本ペットボトルを消費し、1秒間に740本が売れ続けている計算となる。同年、国内で販売されたペットボトルの総販売量(59万6056トン)のうち、調味料・みりん・料理酒等のボトルを除いた飲料用ペットボトルは全体の98%を占めた。圧倒的にペットボトルは飲料用として消費されていることがわかる。
日本はペットボトルに入った飲料を買い求めることがとにかく簡単な国である。恐らく‘何故そんなに買うのか?と自問する暇もないほどに自動販売機やコンビニが立ち並ぶ。
近年のマイバッグマイボトル運動の推進によりマイボトルを持ち歩く人は増加した印象はある。しかし、“面倒くさい” “荷物が増える”などの理由から約4割の人が脱落する実態と、マイボトルを持参していても量が足りなくなって結局追加で飲み物を購入した経験を約8割の人が「よくある」「たまにある」と回答した調査もある。そんな現状に待ったをかけるシステムアプリが国内外で続々と登場している。
【参考】
https://lessplasticlife.com/plastics/trash-recycle/pet-bottles-consumption-in-japan/
水を探す新しいムーブメント
これから紹介するアプリはどれも無料で手持ちのボトルに水をレフィルできる場所を探せる、言わば水のマップだ。これらのアプリが目指す共通のゴールは『使い捨てペットボトルの削減』という1つの強い信念だ。給水スポットには公共の水飲み場も含まれるが、街中のレストランやカフェなども続々と賛同しムーブメントとなりつつある。先述のように、ペットボトルを飲料を購入する主な動機は「便利さ」にあることから、これらのアプリでも追及されるのは利用のしやすさだ。アプリによっては水の種類を指定検索することができたり、公共の場所とレストランが色分けで見分けられたりと工夫が凝らされている。また、給水量の履歴をアプリ内で管理することによって、自分がどれだけのペットボトルを削減する事ができたのか可視化する機能まである。
利用者だけではなく、水を提供するレストラン側にももちろんメリットはある。入店率の向上や店のイメージアップだ。入店率が高まれば“ついで買い”も期待できるし、“エココンシャスな入りやすいお店”というイメージアップや宣伝効果にもつながり、新規顧客の獲得にもなるだろう。
◼オランダ発のアプリ『Tap』https://findtap.com/
水道水の他、「冷水」「ろ過・浄水」「炭酸水」「味つき水」の4種類を絞りこむ検索機能も付き、世界30ヵ国7,112の都市で利用できる「Tap認定レフィルネットワーク」を構築、シェイクシャックやスターバックス等有名店も名を連ねる。もちろん日本国内でも利用可能で、今後、世界100万店舗の登録を目指している。
◼イギリス発のアプリ『Refill』https://www.refill.org.uk/
イギリスの150地域、16,000ヵ所にまで給水スポットを増やし、各地域のコーディネーターが給水スポットの普及や水を買わない活動を精力的に展開している。日本国内ではNGO団体『水Do!ネットワーク』と提携し、共同アクションで環境問題への解決に向けてペットボトル飲料に頼らない街づくりへ大きく貢献している。
◼日本初給水アプリ『mymizu』https://www.mymizu.co/
2019年に日本初となる給水アプリが登場した。レストラン・カフェ・ホテルなどを含む全国8,000ヵ所以上の給水スポットと提携し、検索可能だ。また給水によって削減したペットボトルの数、CO2排出量や節約金額を可視化し、アプリで管理することもできる。
アプリ供給の他にも、公園や海岸の清掃活動、講演会を通して消費行動の変革や持続可能な地球環境に向けたプラットフォームとして次々に活躍の幅を広げている。
◼無印良品のアプリ『水ーMUJI Life』https://www.muji.com/jp/ja/stories/food/520171
2020年7月、プラスチックごみ削減の一環として無印良品店内に給水機を設置し、無料で誰でも給水できるサービスを開始した。店内にて専用の詰め替えボトルも販売されるが、持参したマイボトルにフィルターを通した水道水をレフィルする事も可能だ。そして、給水機が設置済の無印良品店舗の他、公共の給水スポットを検索できるアプリも同時に登場した。
幅広い商品を揃えるライフスタイルに特化したブランドだからこそ、同ブランド愛用者へ向けて消費スタイルの変革をスムーズに訴えかけるサービスとアプリと言える。
ペットボトルはコストや性質上“ボトルtoボトル”でのリサイクルは難しく、多くはポリエステル繊維などにダウンサイクルされやがて廃棄される。さらに、ペットボトルは生産時にもリサイクル時にもCO2が排出され、地球にとって何重にも負荷がかかっている点から見ても、我々が目指すソリューションはペットボトル飲料そのものを買わないライフスタイルの確立と言えよう。スマホを肌身離さずのこの時代、これらのアプリがもっと周知され、脱落しないマイボトルユーザーが増えることを願う。
【参考】
https://heapsmag.com/new-app-google-maps-for-water-tap-no-more-plastic-bottled-water-movement
【参考】
https://ideasforgood.jp/2019/09/26/mymizu/
Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について
「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。