COLUMN

2019年10月31日 コラム

「ほとんど石と同じ」外見のプラスチックをどう減らせるか? 新しいプラスチック海洋汚染との戦い

まるで、捨てられまいと人の手から逃れるように……プラスチックは進化を遂げている。年間に800万トンも海へ流出しているプラスチックごみ。我々が想像する姿は、ビニール袋だったり、ペットボトルの姿だったりするだろう。しかし最近、プラスチックごみのなかに「ほとんど石と変わらない」外見のものがあると判明している。

 

ほぼ石と変わらない外見…判別が難しいプラスチックごみ

突然だが、あなたはこれらのうちどれがプラスチックで、どれが本物の石か見分けがつくだろうか?

Turner et al, 2019 学術論文より引用

 

答えは、「すべてプラスチック」が正解だ。プリマス大学の研究者、アンドリュー・ターナーが2019年に報告したこの「岩石プラスチック」の外見は他の岩石と一切区別がつかない。したがって、プラスチックごみの回収を試みても、見過ごされてしまうリスクが高い。岩石プラスチックの存在をターナー氏へ報告したボランティア団体「コーニッシュ・プラスチック・ポリューション・コリジョン」も、同様の課題を抱えていた。

 

環境をテーマに活動するアーティスト、ロブ・アーノルド氏は、この石を本物の岩石と混ぜて展示し、どれが本物かを閲覧者に当てさせた。しかしほとんどの参加者はプラスチックと岩石を見分けられなかったという。この報告が上がるまで、プラスチックは障害物とぶつかったり、紫外線からダメージを受けたりして徐々に粉砕されることまでは知られていた。しかし岩石と全く見分けがつかないプラスチックの報告は初となる。

ターナー氏によると、クロム酸鉛(II)を添加されたプラスチックが、このような風化を遂げる可能性があるようだ。クロム酸鉛(II)には毒性がある。しかし、子供が誤って口に含んでしまっても、石と見分けがつかなければ危険性に気づかず、親の対処が遅れるかもしれない。また、同氏はすでにプラスチックを食べたと思われる虫が鉛を含有していると報告している。具体的な健康被害の状況は不明だが、食物連鎖を経由して人の口にまでクロム酸鉛(II)が届くリスクが示された。

 

新しいプラスチックとの戦いは未知数

これらの新しいプラスチックごみと、どう戦っていくべきかーー。一例として、海へ放たれてしまったプラスチックごみを回収する研究が登場した。2013年に設立されたオランダのNGO団体The Ocean Cleanup (オーシャン・クリーンアップ)は、10月2日に海洋プラスチックごみ回収装置の稼働実験に成功したのだ。

最新設備では1mm単位のマイクロプラスチックまで回収できたことから、人間の目では区別のつかないプラスチックごみを、機械的に除去するシステムに期待が高まっている。オーシャン・クリーンアップは2014年に始まったプロジェクトだが、当時は実施可能性に疑問が呈されており、苦節5年の成果となった。

 

これまではNGO団体や国家が主導してきたプラスチックごみ対策だが、近年では民間企業の取り組みも増えてきた。英バーガーキングでは現在、国内でプラスチックのおもちゃを廃止し、古いプラスチックを回収して新たなおもちゃに変える「#BKMeltdown 」キャンペーンを実施している。

また、大手飲料・菓子メーカーのペプシコでは「Beyond the Bottle(ビヨンド・ザ・ボトル)」と銘打ち、マイボトルをスーパー等へ持ち込んだ顧客へ、炭酸水を提供するシステムを開発している。ビヨンド・ザ・ボトルのアプリを使って炭酸水の強さを設定できるほか、プラスチックをどれほど削減できたかも可視化される仕組みだ。

日本でも弁当チェーン店が、プラスチック容器の回収を始めた。海に流れ着く前に回収する仕組みが定着すれば、これ以上のプラスチックごみが海に放出されないよう、削減していくことは可能だ。

 

プラスチックごみは、まるで進化するように多様化していく。プラスチックごみを減らす企業や政府の動きは活発化し、すでに海に漂流してしまっているごみを回収する技術も生まれつつはある。だが、どれも施策は発展途上だ。1日に捨てられるプラスチックごみは約82万kgにのぼる。ここから先は個人の努力なくして、未来は切り開けないだろう。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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