COLUMN

2019年10月23日 コラム

2050年の海はプラスチックが魚より多くなる 何度も使えるプラスチックで 考える環境保護

 

このままでは、2050年までに魚よりも多くのプラスチックが、海を覆いつくすーー。

環境省の調べによると、年800万トン以上のプラスチックが毎年海へ流出している。現在世界の海には、1.5億万トンという途方もない量のプラスチックが流れ出ており、2016年のダボス会議では2050年までに魚の量をプラスチックが超えると報告された

 

プラスチックごみの生産量は1964年からの50年で20倍以上に

いったいなぜ、そこまで大量のプラスチックが海へ流出しているのか。理由は主に3つある。1つ目は、生産量の増加だ。プラスチックの生産量は1964年には1,500万トンに過ぎなかった。しかし、生産量は2014年時点で3億1,100万トンと、20倍に増大いくらリサイクルを増やしても、圧倒的な生産量が海への流出を避けがたいものとしている。

2つ目の理由は、プラスチックのリサイクル率の低さだ。現在、世界中で生産されている鋼鉄のうち70%、紙は58%がリサイクルされている。再生紙によるトイレットペーパーやノートは、今やありふれた製品となった。一方、プラスチックのリサイクル率は14%と限定的で、多くがごみとして処分されている2019年時点で日本のプラスチックは84%が再利用されているが、それでも年に2~6万トンが日本から流出しており、世界平均と比べても少なくはない。

3つ目の理由は、使い捨てプラスチックの普及だ。プラスチックと一口に言っても、水族館のガラスや屋根、ガソリンタンクなど長期・繰り返し利用を前提としたものから、私たちが日々目にするレジ袋やペットボトルなど、使い捨てを前提とした製品まで使い道は多岐にわたる。

後者の使い捨てプラスチックは、ごみとして廃棄される頻度が高いため流出量の多くを占めている。ソーダストリーム社が東京都の荒川で実施した調査では、ごみ全体の約7割が使い捨てプラスチックごみだった。プラスチックを全廃することは難しいかもしれないが、使い捨てプラスチックを減らす、または使用するプラスチックの寿命を延ばすだけでも海洋プラスチックごみの削減には大きな効果があるのだ。

 

新しいプラスチック素材がもたらす環境保護への道

プラスチックごみ削減のニーズを踏まえ、Eastman Chemical社(本社:米国)が開発したのが合成樹脂「Tritan(TM)(以下、トライタン)」である。トライタンはガラスのような透明性と、食器洗い乾燥機でも繰り返し使用できる強い耐久性を売りにしているプラスチック素材で、従来のプラスチックよりも割れにくい。頑丈なトライタンの導入はファストフード店など、プラスチック容器で食事を提供する店舗を中心に始まっており、プラスチックごみの削減が期待される。

さらに、再生プラスチックの耐久性も向上している。あるカナダの企業は、再生プラスチックを材料とした建築を可能にした。最強クラスの台風でも壊れない耐久性を確保している。ペットボトル60万本分を再生利用するため、「プラスチックごみの削減に貢献するプラスチック」を実現した。

アディダス(adidas)は今年、海洋環境保護に取り組むパーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(Parley for the Oceans)とのコレクション「adidas×Parley」を発表。使い捨てプラスチックを再利用し、繰り返し使えるトレーニングウェアに昇華した。このように廃プラスチック等にさらなる付加価値をつけて再利用することを「アップサイクル」といい、アディダスはその分野で先陣を切る企業のひとつだ。

また、先ほども登場したソーダストリームは炭酸水を専用ボトルで作るシステムにより、使い捨てペットボトルを最大で年数千本削らすことができる。製品を普段使うだけで使い捨てプラスチックを削減できる最後の2例は、一般消費者にも手が届きやすいプラスチック削減法だろう。

 

より手軽に、より身近に――。2050年の「期限」を前に、プラスチック削減への道が開けつつある。灯台の明かりはついた。ここから先は、消費者が個人単位で「何を選び、買うか」の努力によって、未来も変わるだろう。

 

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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