COLUMN

2020年1月20日 コラム

マイクロプラスチックが土壌へ悪影響を及ぼすと判明

プラスチックごみ問題が、連日ニュースに取り上げられている。街中で捨てられたごみが下水道から河川へ流れ込み、そのまま海をただよう「プラスチックごみ問題」が大阪のG20でも取り上げられ、日本も本腰を入れて対策を取り始めたからだ。特に日本人は魚介類を多く食べることから、海が汚染されて漁獲量が減ったり、プラスチックが混入した魚介が食卓に届いたりする衝撃は大きいだろう。

しかし、プラスチックごみ問題は「海だけ」の問題ではない。地球の大地もまた、危機にさらされている。

 

プラスチックごみが鉛の土壌汚染を招く

プラスチックの土壌汚染には、2つの側面がある。ひとつが、生産時の汚染。次に、使用済みプラスチックによる汚染だ。

土壌調査を専門とするジオリゾームによると、プラスチック製品の製造工場から鉛汚染が発生しうるという。プラスチック製品と鉛は縁遠く思われるかもしれない。実は、プラスチックの製造過程や、製造後の劣化を防ぐ安定剤に鉛が使用されるケースがあるという。近年では鉛の毒性を考慮して、スズを代替利用するケースが増えた。しかし、以前に製造されたプラスチックがごみになったとき、土壌汚染が懸念されるというのだ。

工場だけでなく、製品としてのプラスチックが生む土壌汚染もある。紫外線などによって劣化し、5mm以下まで分解されたプラスチックを「マイクロプラスチック」と呼ぶが、マイクロプラスチックが土壌に入り込むことで、土の栄養が減って植物の育ちが悪くなるという報告が ある。それによると、マイクロプラスチックの含まれた土壌では「植物の背の高さ」「土壌に暮らす生物の育ち」に悪影響が出たという。

 

日本では禁止されていない?マイクロプラスチック生産

マイクロプラスチックには、大きなプラスチックが徐々に劣化して生まれるものと、もともとマイクロプラスチックとして生産される「一次マイクロプラスチック」がある。たとえば、洗顔料や化粧品のスクラブとして使用されるビーズ状のプラスチックだ。ビーズ状のプラスチックは下水処理場のフィルターをすり抜け、土壌や海洋に流れ出てしまう。

英スタッフォードシャー大学と、法医学用化学繊維研究グループの共同調査 では、土壌から1平方メートルあたり140個のマイクロプラスチック・ビーズが発見された。土壌に含まれるプラスチックごと収穫された植物を動物が食べ、私たちの食卓にも「プラ入りご飯」が届く。数年前には、人の歯肉からビーズ状のプラスチックが発見されたとの調査もある。

プラスチックを食べることで生まれる健康への影響は、いまも調査中だ。プラスチックそのものは無害でも、鉛のように、今では使われていない有害物質を食べる可能性もある。プラスチックは長期間劣化しないことから、有害物質を添加したまま蓄積するからだ。そのことから、国連 はマイクロプラスチックが土壌に及ぼす影響も深刻な事態として受け止めている。

すでに英国カナダアイルランド 、オランダでは一次マイクロプラスチックの生産を禁止・制限する法律が施行されたが、日本ではメーカーの自主規制努力目標 にとどまる。

 

消費者もマイクロプラスチックを避ける努力を

海洋プラスチックごみ問題に関しては、日本政府も喫緊の課題として対策を取り始めている。他方、土壌汚染については研究データも局所的なものにとどまり、指針が作られるまでには至っていない。だが、河川と土壌は地続きの関係にある。河川がマイクロプラスチックで汚染されているのならば、その下にある土壌も似たようなものだろうとは素人でも予測できる。

法規制は常に、現実の後をいくものだ。私たちは、化粧品や洗顔の商品パッケージを見て「プラスチックではないスクラブ剤」を選んだり、使い捨てプラスチック容器を避けたりすることで土壌を守れる。ふだんの買い物で、一瞬だけ土壌のプラスチック汚染について考えてほしい。

 

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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