COLUMN

2020年6月11日 コラム

不燃ごみを詰めたペットボトル「エコブリック」は環境問題の救世主になるか?

「海洋プラスチックごみ問題があるならば、100%リサイクルすればいいじゃないか」という考えは、通用しない。というのも、プラスチックごみの中にはリサイクルできないものが相当数含まれているからだ。

そこから、リサイクルできないプラスチックごみをペットボトルへ詰め込み、頑丈なレンガとして家や壁に使うアイディア「エコブリック」が生まれた。エコブリックは急速に広まる中で、環境問題への解決策となるだろうか。

 

エコブリックが生まれた背景にある「リサイクルできないプラスチック」

昨年から、海洋プラスチックごみ問題が日本でも大きく取り上げられている。このままでは2050年までに海に捨てられたプラスチックの量が、魚の総量を上回るという衝撃的なデータもある。

そこで我々がシンプルに考えるのは「もっと使い捨てプラスチックをリサイクルすればいいのでは?」という点だ。実際、日本では紙の82%が回収できている。なぜ同じことがプラスチックにできないのか? と考えるのは当然だろう。

しかし、プラスチックは以下の理由からリサイクルできないケースがある。

 

  • 素材ごとに分別できない

「プラスチック」とはポリエチレン、ポリエステルなど多数の素材を総称したものだ。リサイクルする場合はここから同じ素材だけを集めなくてはならない。ラベル表記などで分別を促進しても、破片になると識別できなくなる。赤外分光などで科学的な分別も不可能ではないが、コスト面から機材の採用は限られている。

 

  • 複合した素材はリサイクルしづらい

純粋な「ポリエステル」だけで作られている製品は、意外と少ない。同じ材質を集めようにも、複合樹脂になればリサイクルは難しくなる。

 

  • 汚れ・添加物があるプラスチックはリサイクルできない

プラスチックの多くは「油がつきやすく、落ちにくい」性質を持っている。そのため、食品の包装容器などは油がこびりついてしまう。また、有害な添加物や着色料を使うことがある。これらのプラスチックはリサイクルできない。

 

エコブリックは「環境負荷が高い」リサイクル

日本では回収した廃プラスチックの57%が、サーマルリサイクル(燃やして熱エネルギーを発電などに使うリサイクル)に使われる。再度燃やすことで二酸化炭素を生み出すため、製品をそのまま再生産したり、化学物質の材料にしたりするリサイクルよりも環境負荷が高い手法だ。世界各国がより環境負荷の低いリサイクルへ移行している中、日本はサーマルリサイクルに頼っている形となる。

エコブリックは、リサイクルに適さないプラスチックを再利用する意味では画期的だろう。だが、その中に潜む添加物や有害物質は、長い時間をかけて土壌を汚染するかもしれない。

また、エコブリックを使って家を建て、そのまま退去すると400年以上土に還らない「ごみ」に戻る可能性がある。そのため、エコブリックはサーマルリサイクルと同じく、環境負荷の高いリサイクルに位置付けられている。一方、ただ捨てるよりはよいとの見方から、プラスチックごみに悩むフィリピンや南アフリカで広がっている。

 

総括すると、エコブリックはリサイクルの救世主にはならない。使われなくなったエコブリックの家は、ふたたび「燃えないゴミ」として地上に残り続けるからだ。また、経年劣化したエコブリックのペットボトルでは、耐久性にも疑問が残る。フィリピン、南アフリカはエコブリックの利用で問題を先送りにしたが、いずれ自国で再び同じ問題に向き合わざるを得ないだろう。

環境負荷が高いリサイクル方法は、いかに手法へ「エコ」の名称を付けても根本的な環境汚染対策にはならない。これは、日本も同じだ。私たちが「サーマル・リサイクル」の名前で妥協せず「もっと環境のためになるリサイクル方法があるのではないか」 「そもそも、プラスチックを買わない方法はないか」と環境負荷を下げる方法を模索していくべきだろう。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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