COLUMN

2020年9月17日 コラム

海外から”プラスチック中毒”と批判される日本の現実

日本の名物といえば、富士山、芸者、寿司、サムライ……そして「包装」である。世界最大の動画投稿サイトYouTubeで「日本の包装技術」は人気のある投稿ジャンルのひとつだ。

 

 

日本に住んでいる身から見ると日常的なシーンに過ぎない「デパートでお菓子を包装するスタッフ」の動画は370万回以上再生され、「あまりに速すぎて手が見えない」「こんなの世界中のどこへ行ったって、日本以外にできっこないよ」と称賛を浴びている。

一方、示唆的なコメントも残されていた。

「俺の国では袋を1つ追加でくれって言っただけで、店員の家族を皆殺しにでもしたかのような目で見られるんだ」

コメントの主はジョークとして書き込んでいるが、笑って済ませていいものかどうか。日本は、過剰包装でも有名な国である。

 

 過剰包装で大量の使い捨てプラスチックを生む国、日本

ワシントン・ポスト誌は、日本の包装容器の多くがプラスチックに占められていると指摘。「横浜でベーグルを買うとしよう。プラスチックのラップで包装されたベーグルは、プラスチック容器に入れられ、さらにプラスチックの手提げ袋で渡される」と、皮肉交じりの事例を掲載した。

 

確かに、先進国においてもコロッケ1つ、ニンジン1本までが個包装されている国は相当珍しい。国連によると、日本は国民1人当たりのプラスチック消費量で世界2位にランクインしている。さらに、国民のプラスチックごみに対する意識の低さについても手厳しい。2019年に1,667名へ行われた調査では、回答者の2人に1人が「ビニール袋を使いすぎていると思ったことはない」と答えている。

日本国内向けのニュースなら”半数も”ビニール袋の過剰包装を気にしていると報道されるかもしれない。だが、環境に関心の高い先進国からすれば”半数しか”関心を持っていないと、批判の対象になっているのだ。

 

 世界が日本を「プラスチック中毒」と批判する背景

日本は年間900トンのプラスチックごみを生み、1人当たり年間300枚のプラスチックごみを捨てている。フランスの国際ニュース専門チャンネル「France 24」では日本の現状を”プラスチック中毒”と称した。

 

先進国がここまでプラスチックごみに目を光らせるのには、理由がある。使い捨てプラスチックの一部は海に投棄され、2050年までに魚の質量を超えると予想されているからだ。

しかも、時間とともに断片化したプラスチックがプランクトンや小魚のエサとなり、食物連鎖を経て我々の食卓に上っている。「プラスチックに添加された成分ごとプラスチックを食べる」健康への影響は未知数。中には人体に有害な報告が多数挙がるビオフェノールAが添加されたプラスチックもある。

 

世界各国は、日本より先んじて対策を取ってきた。1882年から急速に広まったビニール袋は、2002年のバングラデシュを皮切りに法律で禁止され始めた。規制の対象はビニール袋に限らない。ストロー、ペットボトル、マイクロビーズなどの製品に対する規制や、再生プラスチックの利用を義務付ける法律が世界中で可決されている。

さらに、これまで世界中のプラスチックごみを引き受けてきた中国やタイが輸入規制をかけた。これまで、プラスチックごみ処理を諸外国に押し付けてきた先進国も、現状を直視せざるを得なくなったのだ。

 

日本が「プラスチック中毒」から脱却を始めた

ここほどまでに使い捨てプラスチックごみへの関心が高まる中、日本は他国に後れを取ってきた。しかし2020年にようやくレジ袋の有料化が始まり、各社が紙袋など代替の包装容器を探し始めた。生分解性プラスチックへの研究も進んでいる。(阪大TBMダイセル日立造船など)

一方、現在採用されている生分解性プラスチックの多くが、海では分解されにくいことも判明している。企業や行政の努力は急ピッチで進むものの、個人が消費量を抑える以上のインパクトは限られる。2050年まで残された期間はわずか30年。生きている間に地球を守り抜けるかどうかは、私たち個人の行動にかかっている。

 

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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