COLUMN

2020年10月8日 コラム

プラスチックと不妊のリスク プラスチックに添加される環境ホルモン (内分泌かく乱物質)とは

ホルモンとは、体内で作られる化学物質の一部だ。たとえば、水不足のときに「のどが乾いたと脳に伝達する」「尿から水分が逃げないよう調節する」といった、多種多様な働きをする。

ホルモンは見つかっているだけでも100種以上あり、ごく微量で作用する。過剰でも、不足しても重大な影響を起こすのだ。例を挙げると、歌手の絢香さんを苦しめたバセドウ病は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によるものだ。

 

ダイオキシンで有名になった内分泌かく乱物質

この、ホルモンの働きを脅かす存在が、かつて環境ホルモンとしてニュースに取り上げられた「内分泌かく乱物質」だ。

 内分泌かく乱物質が有名になったきっかけはダイオキシンである。ダイオキシンはプラスチックやビニール製品などを300℃前後の低温で燃やすと発生しやすいとされる物質で、発がん性・生殖障害や免疫機能への低下が多数報告された。たき火など一般的な行為でも発生しうることから広くメディアに取り上げられ1999年に規制の対象となった。

しかし、内分泌かく乱物質はダイオキシンだけではない。環境省が一覧化した「内分泌かく乱作用があると疑われる化学物質」のリストは67件に及ぶ。中でも代表的な化学物質を、一部抜粋した。

 

プラスチックの原料として主に使用。食品の容器から体内に摂取される可能性がある。微量でも動物の胎児等に影響が生じた報告が出たとの報告から、各国で乳幼児向け製品への使用が禁止されている。日本では調査中。

 

電気機器などに広く使用。米ぬか油にポリ塩化ビフェニルが混入したカネミ油症事件で1万3,000人が中毒となったことで有名に。現在は使用が禁止されているが、処理する技術が日本になかったことから現在も倉庫などで保管されている。

 

内分泌かく乱物質が食卓に上るリスク

内分泌かく乱物質は多数存在するうえ、健康へのリスクが明確になるまでは使用禁止とならない。また、禁止されたからも処理技術がない・廃棄コストが見合わないなどの事情で保管されたままになることもある。さらに、内分泌かく乱物質が100%合法的に保管されるとは限らない。違法な産業廃棄物が出れば、そこから空気、土壌や河川を汚染する恐れもある。

雨を通じて河川や海に流れ込んだ一部の内分泌かく乱物質は、ただ沈殿するわけではない。たとえば、ビスフェノールA(BPA)はプラスチックに添加されたまま、プラスチックごみとして海へ流れつく。

 

プラスチックは熱や光に対する安定性が十分ではないため、添加物を使って製品化されることが多い材料だ。そして400年以上も土に還らず、化学物質の運び手になってしまう。そのため、プラスチックごみと添加物の問題は、近年研究が進んでいる。

特に、プラスチックが破断して5mm以下のマイクロプラスチックになると、プランクトンや小魚が餌と誤認して食べてしまう。そこから食物連鎖を経て、われわれの食卓にもマイクロプラスチックが上っている。巡り巡って、内分泌かく乱物質を含んだ食品を我々が食べている可能性が、2018年に指摘された

豪ニューカッスル大学によると、世界中の人が毎週クレジットカード1枚分のプラスチックを食べているという。今や土壌、河川、空気中とあらゆる場所にマイクロプラスチックは含まれているため、完全に逃れることは難しい。だが、今後の健康リスクを減らすためにプラスチックの使用量を減らすことは可能だ。

 

今後、研究が進むことで現段階では知られていなかった有害物質が見つかったり、リスクが指摘されることも増えるだろう。しかし、それまでに海へバラまかれたプラスチックごみを回収するのは至難の業となる。現段階で我々ができる最善手は、使い捨てプラスチックをなるべく減らしていくことにほかならない。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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