COLUMN

2019年11月7日 コラム

3割に満たないプラスチックのリサイクル率にまつわる不都合な真実

日本のプラスチックごみリサイクル率は25~84%と、大きな振れ幅がある。国内の報告では84%のプラスチックが再利用されているが、グローバル基準では25%に過ぎないからだ。なぜリサイクル率に、国内外でここまで大きなギャップがあるのか。その答えはプラスチックをリサイクルする手段にあった。

現在の日本で廃プラスチックをリサイクルする3つの手法

現在、日本では3つの方法で廃プラスチックのリサイクルを行っている。下図は少し古いデータだが、2009年時点で各種リサイクルの比率をあらわしたものだ。

 

リサイクルの種類と割合

 データ元:環境エネルギー株式会社 *100%に満たない部分は単純焼却等

 

私たちが普段想像する「原料を再利用して同じような製品を作るリサイクル」は、正式にはマテリアルリサイクルと呼ばれており、全体の22%を占めている。そのほかにもケミカルリサイクルといって、プラスチックを利用して化学原料を作るものや、ごみを高精度の焼却炉で燃やし、熱エネルギーを再利用するサーマルリサイクルがある。

しかし、サーマルリサイクルは廃プラスチックを燃やすことで二酸化炭素が空気中へ増えてしまうことや、再利用というよりは焼却処分に近いため「リサイクル」として認めるべきか議論がある。実は、サーマルリサイクルは和製英語。英語では ヒート・リカバリー/エナジー・リカバリーと呼ばれ、”リサイクル”という名前も使われない。

一方、汚れていたり、不純物が多かったりするプラスチックは海外でリサイクルとして認められるマテリアル・ケミカルリサイクルができないため、燃やすしかないのも現状だ。このサーマルリサイクルの定義を巡るギャップによって、国内データではサーマルリサイクルも含めるため8割のプラスチックごみがリサイクルできているが、サーマルリサイクルを認めない国外基準では2割台になってしまうのである。

 

プラスチック資源循環戦略による行政の改革

もちろん、この状況を行政もただ手をこまねいて見ていたわけではない。今年5月、環境省は新しく「プラスチック資源循環戦略」を発表した。重要な決定事項を下へいくつか抜粋してみよう。

 

<プラスチック資源循環戦略で定められた主なアクション>

〇 2025年までにプラスチック製容器包装・製品をリユース・リサイクル可能なものとする

〇 2030年までに使い捨てプラスチックの排出量を25%カット

〇 2035年までに使用済みプラスチックを100%リサイクル等により有効利用

 

このとおり、「プラスチック資源循環戦略」は単にリサイクル量の目標数値を設定しただけでなく、燃やすことのないリサイクル増加を目指している。有名なレジ袋の有料化なども、この戦略から生まれた施策だ。行政は今後、リサイクルの手法をよりマテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルに寄せていく。さらにプラスチックの使用量自体を減らし、分解されるバイオプラスチックの利用を促すことで、プラスチックごみが生まれる原因を断つ狙いと見られる。

 

プラスチック資源循環戦略の課題と、目標達成への展望

なぜ、ここまで野心的な目標を設定したのか。背景には2018年の海洋プラスチック憲章がある。海洋プラスチック憲章はG7で合意され、2030年までにプラスチック製の包装容器や製品をすべてリサイクル・リユース可能にするなど、野心的な目標を掲げていた。しかし日本とアメリカはこれに合意しなかったため大きな批判を受けた。

 

2019年にG20が大阪で開催された際、海洋プラスチックごみ問題は主要トピックのひとつだった。そのため、日本は海洋プラスチック憲章で掲げられた項目以上の熱意を世界へ表明する必要があったのだ。

こうして日本は脱プラスチック戦略でリーダーシップを握ることに成功した。しかし一方、「プラスチック資源循環戦略」の数値目標は「海洋プラスチック憲章を上回る」ためにできることの積み上げではなく、理想像から設定されてしまった面がある。

 

そのため、具体的にどうやってプラスチック排出量を削減していくかの施策は、これから作っていかねばならない状況だ。今後はレジ袋有料化のようなプラスチック製品への法規制や課税、リサイクル可能な製品への補助金などを通じ、プラスチックの排出量削減が急ピッチで進む。だが、根本的なプラスチックごみの削減には個人単位で努力をしていくしかないだろう。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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