COLUMN

2019年11月20日 コラム

「脱プラスチック先進国」アフリカに学ぶレジ袋対策

エチオピア、タンザニア、ルワンダ、マラウイ……。いずれもGDPは日本よりはるかに低く、発展途上国の扱いを受けている国だ。マラウイに至っては年間所得の平均がわずか1180ドル(約12万7,000円)であり、世界最貧国として、ときおり飢餓や疾病のニュースが報道される。

しかし、これらの国が実は「脱プラスチック先進国」であることをご存知だろうかJETRO(ジェトロ)の発表によると、アフリカ大陸にある54カ国中、30カ国がプラスチックの規制を導入している。特にケニアとルワンダはプラスチック袋の使用に「罰金もしくは禁固刑」と厳しい罰則を課している。

 

プラスチックによって起きる「災害」

なぜ、アフリカ諸国でそこまでビニール袋が重罰を受ける対象となったのか。背景にはプラスチック起因の「災害」がある。ルワンダではビニール袋が川をせき止め、洪水の原因になっているとの報告があった。プラスチックが直接人の命を脅かしていたのだ。

そのため、プラスチックの袋に入った製品を売りたければルワンダ政府の許可を得なくてはならない。また、政府にどうリサイクルするかも提示しなくてはならない。生分解性プラスチックすら、分解に約1年かかることから果物や野菜のビニール袋には使用できない。月に1回、首相も率先してクリーンアップに参加し、いまやルワンダはアフリカでもっともプラスチックごみが少ない国との誉れを得た。

 

同じアフリカに位置するケニアは、ビニール袋の製造・輸入・包装・使用を2017年から禁止した。違反した場合の罰金は最大400万円相当にのぼる。現地では、政府から禁止されていない成分を使った「脱法ポリ袋」との戦いがいまも続く。政府は代替となるマニラ紙や黄麻などを使うよう誘導しており、今後さらにビニール袋の利用は減っていく見込みだ。

ケニアにおけるビニール袋ごみ厳罰化の背景には、牛の誤飲がある。現在も、ケニアでは貨幣のほかに牛が通貨として使われている。その貴重な牛がビニール袋を誤飲し、死亡する事故が反プラスチックごみ運動にも繋がった。大牛を取引に使えなくなるだけでなく、「プラスチック入り牛肉」への不安も広がったためだ。

 

日本も例外ではないプラスチックのリスク

実はこのリスク、日本も他人事ではない。東京理科大学の二瓶泰雄教授によると、川ごみ全体の6%はプラスチック等の人工系ごみで占められているという。川ごみは水害のリスクを増すだけでなく、海へ流れ込む。プラスチックごみが海へ流れ込む過程で障害物に当たった衝撃や、紫外線の影響で粉々に粉砕され「マイクロプラスチック」となる。マイクロプラスチックは5mm以下の小さな破片で、魚や貝などに餌と誤認されやすい

英ハル大学・ブルネル大学ロンドンの共同研究チームの報告によると、採取したムール貝すべてからマイクロプラスチックが検出されたという。日本でも東京農工大などの研究グループが、マイクロプラスチックに含まれている有害化学物質が貝などに蓄積していることを確かめた。

仮にマイクロプラスチックそのものに害はなくとも、プラスチック製品には工業用途で作られた、食べるには有害な物質も添加されている。また、捨てられた当時は無害だったプラスチックごみも、マイクロプラスチックとして漂ううちに発がん性を有する有害物質を吸着することが報告されている。

貝や小魚がこれらの有害物質ごとマイクロプラスチックを食べることで、我々人間も最終的には”毒入りプラスチック”を食べている可能性がある。国連環境計画(UNEP)によると、プラスチックごみの7割は包装容器だ。ビニール袋削減は、身を守るうえで喫緊の課題なのである。

 

2人に1人いる「ビニール袋を使う人」をどう説得するか

現状の日本では、ビニール袋の有料化が計画されるなど一定の進展はみられる。しかし、市民が積極的にビニール袋の使用を控えているとは言いがたい。日本チェーンストア協会の調査によると、2019年の3月時点で確認したレジ袋辞退率は54.63%。約半数の顧客はレジ袋を利用している。

「自分がビニール袋を使わない」だけでは、口に入るプラスチックごみを無くすことはできない。今後、残り45%の人を説得するために何ができるかを、これから考えていかねばなるまい。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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