COLUMN
コラム
コロナ自粛で抱える新たなプラごみ課題
テイクアウトやデリバリー利用増加で増える使い捨てプラスチックごみ
世界的に猛威をふるう新型コロナウィルス。日本でも感染が確認され、“コロナ自粛”を始めてもう1年が過ぎようとしている。外出自粛により増えているのがプラスチックの家庭ごみだ。自炊が増えると肉や魚の食品トレーが溜まり、また“オンライン飲み会”なる言葉も登場し、飲食店からのテイクアウトやデリバリーの弁当容器に加え、プラスチック製包装やペットボトルに至るまで、コロナ禍のプラスチックごみの形状は様々。
容器包装プラスチックごみを分別回収している自治体への調査によると初の緊急事態宣言以降の回収量が、大阪・京都では約8%、東京では10% 、さらに横浜市では12.5%増と急激な増加傾向にある。私たちは、未曾有の経験により“新しい生活様式”を導入する一方で、使い捨てプラスチックごみの増加という問題も同時に抱えるようになってしまった。
そもそも日本は1人あたりの使い捨てプラスチックごみの排出量は米国に次いで2位と多く、見た目にこだわった過剰包装の国として海外から批判を受ける立場にある。国連環境計画(UNEP)によると、世界のプラスチックごみの約半分が使い捨て製品であり、中でも容器や包装パックが内訳の大部分を占める。
これらの使い捨て容器は短時間使用され、食べ終わるとすぐに“容器”から“ごみ”という認識に変わりその後それらがどうリサイクルされるのか、はたまた海へ流れ着いて自然や海洋生物を脅かす存在となるのか考えられないまま安易に捨てられる。
外食を一斉に控えた影響を多大に受けている飲食業界を応援したいという気持ちもあり、テイクアウトやデリバリーサービスの利用増加に繋がっている一方、地球を傷つけているという矛盾はどう捉えるべきなのか。命や生活を守る事は言うまでもなく大切だ。しかし、その命や生活を守るはずの“新しい生活様式”の影で将来も続く私たちの住処である地球を傷めている問題は軽視できない。2019年のG20以降、海洋プラスチックごみ問題の関心が高まっている中で使い捨てプラスチックごみの増加傾向は痛手と言える。しかし、世界的非常事態を前にしてはサステナビリティの優先度は低くなり、以前のように実行しにくくなった。ウイルス対策とサステナビリティの両立を成立させるのは、まさに消費スタイルの是非を自答するエシカルマインドのみなのかも知れない。
企業や飲食店で進む脱「使い捨て」
使い捨てプラスチックごみ増加問題を受けてサステナブルな容器を導入している店にも関心が集まっている。環境問題に意識が高いドイツでは、日本同様にコロナ以降使い捨て容器包装ごみが10%も増加している問題をうけて、テイクアウト時のリターナブル容器のシステム導入事業者が急成長している。商品代金に加えて専用容器のデポジットを払い、食べ終わった後容器を返却すれば容器代が戻ってくる仕組みだ。デポジット制ではなく、返却にかかった日数に応じてポイントが加算されるなど方法も多種多様で、容器は最終的に100%リサイクルできて見た目もオシャレという抜かりのなさだ。
日本でも町全体で脱使い捨てに取り組む自治体も多く登場し、京都府亀岡市や岡山県真庭市のように独自のアイデアで町の自然と、地球を持続可能にするアクションを起こしている。
しかしながら、感染防止の観点から持ち込み容器を禁止せざるをえなくなった店も多くあることも事実で、これらのサステナブルなアクションが減速しないことを祈るばかりだ。
政府はプラスチック資源循環戦略の中で2030年までに使い捨てプラスチック25%削減、2035年までにリサイクル100%を掲げている。本来は削減取り組みしやすいはずの使い捨てプラスチックをコロナ禍においてどこまで増加を食い止め削減できるかは、まずは私たちが今目の前ある使い捨て容器に危機感を持つことだろう。
参考引用リンク
https://www.asahi.com/articles/ASN6F3DZ9N68PLBJ005.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200908/k10012606851000.html
https://www.thinktheearth.net/think/2020/11/066rebowl/
https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/global/h_vol12/
https://ideasforgood.jp/2020/03/24/coronavirus-and-sustainability/
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia/vod/post_217797/
https://sustainability.jp/kamakura_sdgs/covid-19/
https://www.city.maniwa.lg.jp/soshiki/14/29044.html
https://www.env.go.jp/press/106866.html
Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について
「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。