COLUMN

2019年10月15日 コラム

世界平均の27倍…日本海に漂うマイクロプラスチックを救う 「プレサイクル」の試み

日本がマイクロプラスチックの“ホットスポット”として知られていることをご存じだろうか。マイクロプラスチックとは、5mm以下に粉砕されたプラスチックを指す。プラスチックは捨てられたあと、地面に還らないが少しずつ粉砕されて小さくなり、最後には視認するのもやっとの「マイクロプラスチック」となる。

いったんマイクロプラスチックになってしまうと、手で拾い集めるのが困難なため回収しづらい。また、目に見えないほど小さくなってしまうと、気づかぬうちに海洋生物が食べてしまう原因となる。

 

有害な化学物質と共に海へ流れ出るマイクロプラスチック

九州大学の磯部篤彦教授らの調査によると、日本海の海水1立方メートルあたり、3.7個のマイクロプラスチックが回収された。これは世界の海の平均と比べて27倍の値になる。海流の影響で諸外国から流れ着いたものもあるため、一概に日本が出したごみとは言えない。

とくに、2018年までは中国が世界中のプラスチックごみをリサイクル資源として受け入れていた背景も関係しているだろう。Jambeckらの調査によると、中国からは年間132~353万トンのプラスチックごみが海洋へ流出しているという。

しかし、すべてを中国のせいにして終わるわけではない。東京理科大学の二瓶泰雄教授の調査では、国内29河川の調査ですべての河川からマイクロプラスチックが検出されているからだ。海に流れるプラスチックごみが川へ逆流することは考えづらいため、日本の河川で出たプラスチックごみは原則”日本産”としてとらえるべきだろう。

 

東京都江戸川区の荒川に散るプラスチックごみ。多くは粉砕されている。

画像:東京都・江戸川区の荒川に散らばるプラスチックごみ。多くが破片状に粉砕されている。

 

実際に2019年9月に実施された、ソーダストリーム社主催のクリーンアップイベントにおいて、東京都の荒川で回収されたごみの95%がプラスチックごみだった。海に流れ出たマイクロプラスチックは、プランクトンや小魚、大きな魚を経て我々の食卓にも届いている。WHOの報告では現時点で人体への害は報告されていないものの、人は年に5万個ものマイクロプラスチックを食べているとの試算もあるからぞっとしない話だ。

また、マイクロプラスチック自体が問題にはならなくても、塗布されている化学物質も考えれば害がある。プラスチックは製造時に酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの添加物が加えられる。海洋生物がマイクロプラスチックを誤食するとき、これらの化学物質も一緒に食べてしまうのだ。こうして取り込まれた化学物質が、海を経て我々の口に届いたとき、どれくらい体内に残留するかは研究が追い付いていない。しかし、流出を防ぐに越したことはないのは間違いないだろう。

 

そもそも使わない「プレサイクル」による汚染対策

そこで注目されているのが、そもそもプラスチック素材を使わない「プレサイクル(precycle)」による汚染防止だ。プレサイクルとは、消費者がリサイクルしやすい商品や、ごみにならない商品を選ぶことを指す。

もし街中で販売されている製品のほとんどにプラスチックが使用されていなければ、ポイ捨てされてもマイクロプラスチックを生むことはない。また、プラスチックでも使い捨て製品を削減すれば、使用量を減らすことができる。

たとえば炭酸水メーカーのブランド、ソーダストリームの専用ボトルは製造から4年間使うことができ、年間最大で数千本のペットボトルを削減可能だ。他にも大手コーヒーチェーンのスターバックスは定番商品にタンブラーを加えることで、「スターバックスのおしゃれなタンブラーを持ちたい」と購入意欲を喚起したり、「ご当地タンブラーを集めたい」と関連購買を促進したりと、ビジネスの成功とプラスチックごみ削減を両立させている。

消費者がプレサイクル商品を選択し、生産者も使い捨てプラスチックを削減することで、日本のマイクロプラスチック問題は確実に進展しつつある。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)の最新情報を見る

お問い合わせ・ご意見はこちら