COLUMN

2020年1月30日 コラム

ファストファッションとプラスチック 企業が取り組む新たな脱プラ路線とは

私たちは普段、プラスチックを身にまとい暮らしている。ポリエステルのワンピース、ナイロンのニット、アクリルジャケット……それぞれ名前は違えども、すべてプラスチック製品だ。

プラスチック由来の衣類は、頑丈で摩擦に強く、軽い。特にポリエステルはこれらの強みに加え乾きやすく、虫やカビにも強いことから多くの衣類に採用されている。しかし、近年の脱プラスチック・ムーブメントを受け、ファッション業界にも変化が訪れている。

 

ファッション業界の脱プラスチック化

プラスチック製の衣類は安価なため、ファストファッションを中心にアパレル業界で多用されてきたその結果、この14年間で人類が購入した衣類の量は60%増加。プラスチックごみの量も、それに伴い増えている。しかも、85%の衣類は最終的にごみとして埋め立てられ。不名誉なことに、排出される二酸化炭素のうち10%は、ファッション業界から生まれているのだ

大量に生まれたプラスチックは、最終的に土壌や海洋にごみとして蓄積する。2050年には、海洋プラスチックごみの量が、魚の量を超えるという予測も出ている。この流れを受け、ファッション業界にも脱・プラスチック化の取り組みが始まった。

 

ファッション業界の脱プラスチック化

トレンドに左右されない「10年着られる服」をテーマに成長する米アパレルブランドEverlane(エバーレーン) は再生プラスチックのコートを”Worn Forever”(ずっと愛用)として販売。一度きりで捨てられる製品との差別化を図る。

ほかにも、スポーツウェアを製造するアディダスは、脱プラスチックを図るParley for the Oceansの設立メンバーだ。同団体はAIR(Avoid, Intercept, Redesign:プラスチックの使用回避、回収、再設計)を掲げ、プラスチック使用量の削減へ挑む。

中でもアディダスにとって「脱プラスチック」は難易度の高いミッションだ。スポーツウェアは高い撥水性と頑丈さを要求する。そして、この2つを安価に満たせる材料はプラスチックだからである。

 

そこで、アディダスは海洋から回収されたプラスチックごみを再生利用し、未使用プラスチックと同等の品質を誇るポリエステル繊糸にアップサイクルした。アップサイクルとは、リサイクル用語で「再生利用しながら、付加価値をつける」ことを指す。すでに1,000足以上がアップサイクルしたプラスチックから生産され、市場に出回る。

脱プラスチックの流れは、ハイブランドにも押し寄せている。STELLA McCARTNEY (ステラマッカートニー)は、非PVC素材を積極的に採用。サステナビリティを高級ブランドでけん引する。BURBERRY (バーバリー)は包装の一部にコーヒー用プラスチックカップからのリサイクル品を使用し始めた。さらに、BURBERRYは売れ残った衣類の廃棄処分をやめ、寄付などで再利用すると発表している。

 

消費者の選ぶ姿勢が問われる

このままファストファッションを買い続けるのは、正しいのだろうか。スポーツウェアからラグジュアリーブランドまで脱プラスチック化に動き出したことで、消費者には選択肢が与えられた。これまでは、脱プラスチックを考えるなら、積極的に非プラスチック衣類を扱うショップを探す必要があった。

だが、2019年以降は多数ある非プラスチック衣類から、好きなデザインを探す可能性が広がり始めている。今後は、私たち消費者がショップタグを見るときに、素材にも目を通して「こっちのパンツもかわいいけれど、ポリエステルか……じゃあ、あっちにしよう」と選択するだけでいい。
より簡単に非プラスチック衣類が選べるようになった今、最後に責任を背負うのは一人一人の消費者だ。エシカル消費(環境などに配慮した消費)を推進するためにも、今後はショップタグを環境保護の角度からも、見つめてみてほしい。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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