COLUMN

2020年3月3日 コラム

プラスチックの雪が降る…世界最悪のプラスチック汚染地・北極の今

北極では、プラスチックの雪が降る――。人里離れた氷と海の大地で、世界最悪レベルのプラスチックが検出されている。その理由は、海流にあるという。

 

太平洋ごみベルトを超える北極のプラスチック汚染

これまで研究者の間では、太平洋ごみベルトがプラスチック最大の集約地点として知られていた。米カリフォルニア州とハワイを結ぶ海流は、世界中のプラスチックごみがただよう。その姿がベルト状に見えることから、太平洋ごみベルトと名付けられた。

そして長らく、太平洋ごみベルトは最大の海上プラスチック汚染地帯とみなされていた。ところがエクセター大学のティム・ゴードン率いる国際チームは、肉眼で確認できるレベルのプラスチックごみを発見した。さらに北極付近の海域では太平洋ごみベルトを超える、海水1Lあたり1万4,000個ものマイクロプラスチックが検出されているというのだ。

プラスチックは海水や氷山に蓄積するだけではない。5mm以下に粉砕されたマイクロプラスチックは、海水に溶け込み、魚のエサとなる。我々の食卓に上る魚や、海から採れる塩がすでにプラスチックで汚染されていることは、複数の調査が明らかにしている。

 

北極だけではない「プラスチックごみ問題」

さらに北極圏では、マイクロプラスチックが海水からの上昇気流に乗り、プラスチック混じりの雪が降るという。プラスチックが雨や雪に混じる現象はフランスのピレネー山脈日本の福岡市でも報告されており、北極特有の現象とはいえない。それゆえに、私たちにとっても身近な問題だ。私たちは、空気中のプラスチックを吸っているのである。

豪ニューカッスル大学の調査によれば、私たちは毎週クレジットカード1枚分のマイクロプラスチックを食べているという。マイクロプラスチックは水道水、ビール、海産物、空気中などあらゆるところに入っており「マイクロプラスチック・ゼロ」生活は現代社会に生きるなら、不可能と言わざるを得ない。

 

プラスチックごみ問題が注目されたのは最近であり、健康への影響はまだ正確には判明していないが、現状では、国連食糧農業機関が「一部の粒子は血流や臓器に十分入り込める小ささである可能性がある」ことについて懸念を表明している。有害とも無害ともわからないまま、われわれは年に地球上の人間の体重と同じ量のプラスチックを製造している。

 

プラスチックが有害物質を運んでいく

仮にマイクロプラスチックはほとんど排せつされ、人体に直接的な影響がないとしよう。だとしても、プラスチックに付着した有害物質は見逃せない。たとえば、海洋プラスチックに関する東京農工大の調査を見ると、環境ホルモン・ノニルフェノールが世界中のプラスチック片から検出されている。ノニルフェノールは厚労省によって「飲み込むと有害」「生殖器または胎児への悪影響のおそれの疑い」「水生生物に非常に強い毒性」が指摘されている。

海洋で発見されたマイクロプラスチックは、そのまま上昇気流に乗り雨や雪となる。海洋で有害物質を吸着したプラスチックが発見されたなら、それは「空を舞っている」可能性も高いのだ。それゆえに北極をはじめとする雪原は、プラスチック+有害物質の汚染リスクがある地域となっている。

これまで、空気中に出たプラスチックを減らすこと、そしてこれ以上のプラスチックを世に生み出さないこと……この2点が重要なのは、プラスチック問題が私たちの健康問題でもあるからだ。実際、農工大の調査では神奈川県で世界平均と比べても大量のノニルフェノールが検出された。遠い北極が汚染されているならば、それ以上にプラスチックへ触れている我々はより大きな影響を受けているのだ。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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