COLUMN

2020年3月10日 コラム

BPAフリーって何?プラスチック容器から溶け出す有害物質のリスク

「BPAフリー」という言葉を、目にしたことはあるだろうか。BPAとは、ビスフェノールAという化学物質の略称だ。

BPAは1891年に発見された歴史の長い化学物質で、ポリカーボネート製のプラスチックを製造する際や、樹脂の原料として採用され、ポリ塩化ビニール(塩ビ)の添加物として利用される。

このBPAが、健康に害があるものとして報告され始めたのは1997年ごろだ。

 

そこら中にあるBPAと健康問題

もともとBPAは、プラスチックの製造に便利な物質だった。DVD、哺乳瓶、缶詰など、従来から身の回りのプラスチックにはBPAが含まれていることがわかっている。そのため、米疾病管理センターの調査では6歳以上を対象にした93%の人からBPAが検出されている。食品の包装やボトルに含まれる化学物質が、熱などで染み出して体内に入るからだとみられている。

1997年ごろから、げっ歯類がBPAに触れると「成長の低下」「生存率低下」など、発達への影響が報告され始めた。ただし、実験動物で害が報告されたからといって、人間にまで有害とは断定できない。それからBPAの研究が急ピッチで進められ、人間への害に関する報告も出てきた。

 

<BPAの健康問題として挙がった主な報告>

・3回以上の流産経験がある女性と未経験の女性の比較調査で、血清 BPA 濃度の高値と再発性流産の増加に関係がある可能性(2005年

・代謝機能を混乱させ、肥満・糖尿病を引き起こす可能性(2013年

・男性の精子減少、乳がんや前立腺がんに繋がるリスク(2015年

 

日本の食品安全委員会も、これらの報告を受けて調査を開始した。また、諸外国も禁止を含め行動を起こしている。

 

<BPAに関するアクションを起こした国・地域>

・哺乳瓶やおしゃぶりなど、一部乳幼児向け製品へのBPA使用を禁止:オーストラリア、カナダ、デンマーク、米ミネソタ州・ウィスコンシン州・ワシントン州

・哺乳瓶と乳幼児が接する食品などの包装容器等へBPA使用を禁止:EU加盟国、米コネチカット州

 

BPAフリーがあれば、安全といえるか?

BPAのリスクが相次いで報告されたことを受け、日本でもBPAを含まないことを意味する「BPAフリー」の表記をするプラスチックが増えてきた。前述のとおり、国際的にも乳幼児向け製品での規制が主なため、子育て中の保護者は、目にする機会が多いだろう。

しかし、BPAが「ない」ことは、安全を保障するものではない。BPAの代替物質についても、安全性が疑問視されているからだ。

その現状を踏まえ、厚生労働省は「ポジティブリスト制度」を採択した。これまで日本では、禁止されているもの以外をメーカーが材料に使える「ネガティブリスト制度」を採用していた。ポジティブリストはその逆で「認められた材質のリスト」にないものや、リストで認められた量を超えることを禁止する制度である。これによって政府は「BPA代替物質も危ない」問題を回避しようというのである。

だが、この施行は2020年6月予定。これまでに作られ、捨てられたBPA添加プラスチックは海洋や土壌に蓄積している。年間800万トンのプラスチックが廃棄されている今、すでに汚染された海のリカバリは難しい。

 

海に流れたプラスチックは細かく砕けたマイクロプラスチックとなり、小魚や貝がそれを食べる。添加物つきのプラスチックは、すでにわれわれの食卓に上がっているのだ。今から作られるものが安全でも、BPA添加済みのプラスチックは海を漂っている。これを減らしていくには、国の動きを待つ前に自分が動いたほうがよい。

まず、使い捨てプラスチックを減らすこと。使い捨てプラスチックを避ければ、海のプラスチックごみも減らせる。ポジティブリスト採択後に作られた製品については「BPAフリー」の表記に気を配り、プラスチックとともに海へ流れ込む有害な(可能性のある)添加物を減らしていこう。自分や、子供の身を守るために、「プラスチックを海へ流さない」努力は今日からでも始められる。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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