COLUMN

2020年3月17日 コラム

海へ捨てられるプラスチック5位「生理用品」を減らすイノベーションとは

海に捨てられるプラスチックごみで、無視できない存在。それが生理用品だ。生理用品はパッド状のナプキンと、棒状のタンポンがシェアの大半を占めており、いずれも原料にプラスチックを含んでいる。

生理用品を堂々とリサイクルボックスに入れる……姿は、想像しづらいだろう。多くの生理用品はリサイクルされることなく捨てられ、一部は海に投棄されるのだ。

 

生理用品の膨大な消費量

「生理用品が消費するプラスチックの量」といわれても、ピンとこないだろう。女性は平均で40年間、生理を経験する。月に1度、5日間ほど出血があり、期間中に20枚のナプキンを消費する。

つまり、1人の女性が9,600枚のナプキンを人生で使う試算になる。1つのナプキンに含まれるプラスチックの量は、レジ袋4枚分程。女性は生涯で、38,400枚ものレジ袋に値する量を消費しているようなものだ。

 

ここまで大量のプラスチックを使用している生理用品だが、プラスチックごみ問題ではあまり触れられていない。その理由は主に2つ。ひとつは、強いタブー意識だ。そもそも、タブー(taboo)という言葉は、ポリネシア語で月経(生理)を意味するtabuから来ている。月経を大っぴらに語ることは、世界各地で恥ずかしいこととされてきた。

日本でも月経は穢れとされ、女性は生理中「月経小屋」と呼ばれる小屋で過ごすよう強制されてきた。この風習は地域によって1970年代まで残っていたというから、決して昔のことではない。

大阪で昨年開催されたG20においても、生理用品から生まれるプラスチックごみについては報道されなかった。繰り返すが、生理用品は海洋プラスチックごみの5位に君臨するアイテムだというのに、である。「語るようなものではない」というタブー意識が、ナプキンやタンポンをプラスチックごみ問題からも、遠ざけてきたというわけだ。

 

生理用品を脱・プラスチックへ導く3つのイノベーション

そして次に挙げられる理由が「プラスチックなしの生理用品なんて、考えられない」というものだろう。現在、ドラッグストア等の店頭に並ぶ生理用品は多くがプラスチックを含む。代替物がなければ、防ぐすべも思いつかないというわけだ。だが、これを解消するイノベーションが、次々と登場している。

まずは、月経カップだ。月経カップは天然ゴムやシリコンで作られており、何度も繰り返し使用できる。蒸れやかゆみもなく、5,000円で10年は使用可能なため、コストパフォーマンスにも優れている。日本ではまだ使用率が低いが、環境問題意識の高い先進国でシェアを伸ばしている。

月経カップ以外にも、生理用品がいらなくなるほどの吸収力を持つ下着が2018年から日本で発売されている。代表格のブランド「エヴァウェア」はタンポン2本分の血液を吸収し、かぶれも防げる。月経カップと併用する人もおり、経血が多い日も漏れる心配なく過ごせるという。

最後に、布ナプキンだ。布ナプキンは今回紹介する3つのイノベーションの中でも、日本で使用率が高いこちらもレビューを読むと、プラスチック製のナプキンより蒸れを感じにくいという。ただし、医師によって濡れた布ナプキンが肌に密着し、体が冷える可能性や、衛生面での不安が指摘されている。使い捨て布ナプキンも登場しており、衛生面の課題も改善が期待できるかもしれない。

 

「無理」の思い込みを捨て、脱プラスチックを始めよう

プラスチックを含まない生理用品なんて無理だ、とあきらめてしまうのは簡単だ。だが、ペットボトル、食品容器といった従来の製品はすべて「無理」を乗り越えてサステナビリティに挑戦してきた。そこから生理用品だけ例外視するのはタブー扱いにほかならない。

このまま生理用品だけが頑なにプラスチックを原料として使えば、海は生理用品でいっぱいになってしまう。そんな悪夢を回避したいなら、私たちが生理用品の脱プラスチック化を進めた、最初の世代になるべきだろう。

Plastic Fighters Japan(プラスチック・ファイターズ・ジャパン)について

「プラスチック・ファイターズ」は、世界45か国のソーダストリーム幹部職が集結し始動させた使い捨てプラスチック廃止活動。
ホンジュラスのロアタン島で行われたビーチの清掃活動では2000人ものボランティアが集まるなど、大規模な運動へと発展している。

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